事業再構築補助金_第1回公募開始

こんにちは!川島公認会計士事務所代表の川島です。

2021年3月26日、遂に事業再構築補助金の公募が開始されましたね。

確認したところ、特に大きなサプライズはないように思います。また、やはりものづくり補助金の内容に近いなという印象です。

いよいよ本格的に事業計画や申請書の作成に取り掛かることになりますが、本ブログでは公募要領で明確になったことや改めて留意しておくべきことを取りまとめたいと思います。

なお、本ブログでは、公表された公募要領、指針・手引きなどの資料内容について、全体的な理解のためになるべく分かりやすい言葉や表現で記載することを趣旨としております。そのため、言葉の正確性や内容の網羅性を担保するものではありませんので、実際の申請に当たっては本指針と今後公表される公募要領等を必ずご確認ください。
また、本ブログは私見を含んでおり、当該私見はその妥当性を保証するものではありませんのでご留意ください。

事業再構築補助金事務局サイト、公募要領、事業再構築指針・手引きはこちら

事業再構築補助金事務局
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事業再構築補助金公募要領

事業再構築補助金公募要領

事業再構築指針

事業再構築指針

事業再構築指針の手引き

事業再構築指針手引

第1回公募の採択までのスケジュール

  • 公募開始:2021年(令和3年)3月26日
  • 申請受付:同4月15日(予定)
  • 応募締切:同4月30日(金)(18:00)
  • 採択発表:同6月上旬~中旬(予定)

第1回公募の応募締切は、想定通り4月末となっていますので、申請書や事業計画の内容等を踏まえるとやはり相当タイトなスケジュールになるかと思います。
公募開始日である3月26日から準備に取り掛かかり始めた事業者さんは間に合わない可能性が高いかもしれませんが、本補助金は抜本的な事業改革を趣旨としており、場合によっては会社の命運に関わるリスクを取ることになりますので、第1回公募に無理に間に合わせることはせず、本当にその検討事業が自社にとって必要・有用・実現可能なのかをじっくり検討して2回目以降に応募する判断も賢明かと思います。

事業再構築補助金の事業全体の予定

本補助金事業は通年で行われる予定であり、2021年(令和3年)度内に4回程度の公募を行うことが予定されています。

しかし、「緊急事態宣言特別枠」については、第1回公募も含め全2回の公募を予定しているとされていますので、本特別枠での応募を検討されている場合はご留意ください。

補助対象者の留意点

本補助金の補助対象者は、①中小企業者等、②中堅企業等に大別され、それぞれ資本金又は出資総額(以下「資本金等」)や従業員数の数値要件がある他、以下のような除外要件が定められています。一方で、ものづくり補助金では補助対象外となっていた医療法人などが本補助金では対象に含まれるとされていますので、これまで対象外として補助金活用を諦めていた法人も改めて検討されてみるのもよいかと思います。

<補助対象者からの主な除外要件等>

  • みなし大企業
    ⇒発行済株式総数の過半数を同一の大企業に所有されている場合など、実質的に中小企業者とは言えない中小企業者。詳細は公募要領をご確認ください。
  • 申告済みの過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円超の中小企業者
    ⇒資本金等や従業員数の基準では中小企業者であっても、当該要件に該当すれば「中堅企業等」として扱われます。

補助事業実施期間の留意点

本補助金の応募が採択され、その後「交付決定」となった場合、実際に申請した補助事業を実行に移していくことになります。
この補助事業の実行は一定期間内に完了させる必要があり、本事業の枠(「通常枠」「卒業枠」「グローバルV字回復枠」「緊急事態宣言特別枠」)によって実施期間が異なっています。

  • 「通常枠」「緊急事態宣言特別枠」
    交付決定日から12ヶ月以内(ただし、採択発表日から14ヶ月後の日まで)
  • 「卒業枠」「グローバルV字回復枠」
    交付決定日から14ヶ月以内(ただし、採択発表日から16ヶ月後の日まで)

補助対象事業の留意点

本補助金の補助対象事業については、上述の各枠組みごとに、①事業再構築要件(指針で示された事業再構築類型に該当すること)、②売上高減少要件、③認定支援機関要件、④付加価値額要件、その他複数の要件が設けられています。
詳細は公募要領をご参照いただくとして、ここでは新たな情報を中心に記載していきます。

  • 【認定支援機関要件】
    従前、事業計画については認定経営革新等支援機関と相談の上策定することとされており、この点に変更はありません。ただし、策定とともに「認定経営革新等支援機関による確認書」を提出することという要件が設けられています。また、補助金額が3,000万円を超える場合は金融機関も含めて策定する必要がありますが、この場合も「金融機関による確認書」の提出が必要とされています。
    なお、本確認書の様式については公表がありませんので、後日様式が指定される可能性があります。
  • 【付加価値額要件】
    従前、卒業枠やグローバルV字回復枠については、一定の場合に補助金の一部返還を求める予定とされていましたが、公募要領によりそれぞれ以下のケースが明示されています。

    <卒業枠>
    ・事業計画終了時点で、(中略)正当な理由なく(中略)中堅・大企業等に成長できなかった場合通常枠の補助上限額との差額分について返還する必要がある
    ・一時的に中堅・大企業等に成長した後、正当な理由なく中小企業者の要件に該当する事業規模の縮小をさせた場合本補助事業終了から5年間は中小企業庁が行う中小企業者等向けの施策(補助金、委託費等)を利用できない⇒返還ではなく別途のペナルティ

    <グローバルV字回復枠>
    ・(中略)正当な理由なく、事業計画終了時点において、付加価値額の年率平均の増加又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均の増加が5.0%に達しなかった場合通常枠の補助上限額との差額分について返還する必要がある
  • 【グローバル展開要件】
    グローバルV字回復枠の要件である本要件につき、以下のように詳細が明示されています。
グローバル展開要件

以上の要件の他にも、以下のような条件が設けられています。

  • 補助金額が1,000万円を超える案件の場合、本事業で建設した建物等の施設または設備を対象に、以下の付保割合を満たす保険又は共済(当該施設等を対象として自然災害による損害を補償するもの)への加入義務を負うことに同意する。ただし、小規模企業者の場合はこの限りではなく、保険等に代わる取組みを実施することでも可。
    (小規模企業者)・・・加入推奨(推奨付保割合30%以上)
    (中小企業等)・・・・30%以上
    (中堅企業等)・・・・40%以上
    なお、補助事業実績報告書提出時に、保険等への加入を示す書類の提出が必要とされています。

不採択・交付取消となるケース

公募要領では、12個のケースを挙げてそれらに該当する事業計画である場合には、不採択または交付取消となる旨が記載されています。

ここでは、本補助金の対象に関する質問や話題でよく耳にしていたことに関連しそうなものをいくつかピックアップしておきますので、申請する事業内容がこれらに該当していないかどうかを慎重にご検討ください。

  • 具体的な事業再構築の実施の大半を他社に外注又は委託し、企画だけを行う事業
    ⇒文字通りですが、他人任せの事業はダメです、ということです
  • 専ら資産運用的性格の強い事業
    ⇒投資目的の不動産賃貸事業などはダメ、ということですね
  • 建築又は購入した施設・設備を自ら占有し事業の用に供することなく、特定の第三者に長期間賃貸させるような事業
    ⇒特定の誰かに長期間貸し付けて賃料をもらうようなケースと考えられますが、上記資産運用的性格の事業と同様の趣旨ですね。逆に言えば、不特定多数に短期で貸し付けるような事業(時間貸しのレンタルオフィス等)は問題ないと解釈できるかと思います。
  • 主として従業員の解雇を通じて付加価値額要件を達成させるような事業
    ⇒そもそも本事業の趣旨からして、解雇でなくとも従業員を削減するようなケースは審査においていい印象は持たれないと思われますね

補助対象経費の留意点

補助対象となる経費について、公募要領では詳細に要件等が記載されており、申請に当たってはきちんと目を通す必要があります。そして、大原則的なこととして、本事業の対象となる経費は、「事業拡大につながる事業資産(有形・無形)への相応の規模の投資を含むもの」であり、本事業の対象として明確に区分できること、その必要性・金額の妥当性を証拠書類によって明確に確認できることが求められています。

以上を踏まえ、ここでは特に留意すべき点について確認しておきたいと思います。

  • 「建物費」につき、当初より建築費・改修費が対象ということで案内されていましたが、今回の公募要領にて以下の点が明示されています。
    ・「建物の単なる購入や賃貸」は対象外⇒購入費は対象外だが、内装工事等の費用は対象ということですね
    入札・相見積りが必要
    ・建物の撤去費用や原状回復費用のみを対象とする事業計画では申請できない(事業資産への相応規模の投資が必要
  • 「機械装置・システム構築費」につき、3者以上の流通業者から型式や年式が記載された相見積もりを取得している場合は中古設備も対象になるとされています。
  • 採択後、交付申請手続きの際には可能な範囲で相見積もりを取り、最低価格を提示したものを選定するように記載されています。また、単価50万円(税抜)以上の物件等については、原則として同一条件による相見積もりを取ることが必要であり、アイミツを取ってない又は最低価格の業者を選んでいない場合は、理由書と価格の妥当性を示す書類を整備するよう記載されています。
  • 担保権を設定する場合は、設定前に事前に事務局の承認を受ける必要がある。

審査項目

公募要領の確認事項のメインである審査項目については、以下のように公表されています。

各審査項目についてはそれぞれ点数が割り振られ、その採点結果の合計で審査されることになります。そのため、各審査項目は事業計画・申請書にて漏れなく触れる必要があり、そして以下にポイントを押さえた内容・記載になっているかが重要です。

当然ながら各論で留意すべきポイントはありますが、かなり細かくなることとノウハウでもありますのでここでの記載は割愛させていただきます(申し訳ありません・・)。
なお、前述の通り各審査項目はすべて考慮しないといけないですが、本補助金特有の内容である「再構築点」はやはりしっかり押さえる必要があるでしょう。もちろん審査項目・審査点数の一部ですので、これらのみで採択が決まるわけではないですが、本補助金の趣旨にダイレクトに直結するところですので大前提だと思います。

事業再構築補助金審査項目

加点項目

通常、各補助金については政策的な配慮やその補助金の趣旨を達成する可能性が高い事業者を選定する目的などから加点項目が設けられ、事業再構築補助金についても以下の項目が設けられています。

しかし、他の補助金で見られるような経営力向上計画や経営革新計画といったものはなく、緊急事態宣言の影響を受けた事業者を救済するための加点のみとなっています。

したがって、事業再構築補助金についてはある意味シンプルで内容の本質が問われるものになっていると思いますので、やはり事業計画の内容が非常に重要になってくるでしょう。

事業再構築補助金加点項目

まとめ

以上、ここまで見てきた内容は、公募要領にて新たに出てきた情報、明確になった情報のうち特に留意しておくべき点を中心に確認してきました。

いよいよ本格的に申請に取り組んでいくこととなりますが、申請に当たっては公募要領をしっかりと理解して内容を押さえるとともに、事業再構築指針や手引きも重要ですので漏れなく読み込むようにしましょう。

なお、本補助金は非常に注目度が高く、多くの事業者様が応募を検討されていることと思います(実際に問合せや質問も多いです)。結果として、これまで補助金の申請をしたことがない事業者の方も多く、申請のための労力や採択可能性について割と安易に考えておられる方も散見されます。
確かに本補助金は予算も大きく、状況も踏まえると多くの事業者が補助を受けられるように見られますが、本質は事業の再構築ということで実際に取り組む事業内容の成否が会社の存続に影響する可能性が高いため、思い付きや軽い気持ちでチャレンジするものではないと思います(もちろん大半の方は大きな覚悟を持って検討されていると思います)。

本補助金の利用可能性がある方はもちろん是非チャレンジしていただいて、皆様の会社や事業の飛躍のきっかけになることを願うばかりです。

当事務所では事業再構築補助金をはじめ、各種補助金の申請支援を行っております。少しでも皆様のお役に立てればと思いますので、申請をお考えでサポートが必要な事業者様は、是非当事務所までお気軽にお問い合わせください。